「まずは麦わらの船をどこに停泊させているのか聞こうか」
徹底的に調べたのだが、押さえた海賊船に麦わらの一味はいなかった。
アームレスリングの大会のせいで、いつもより港は3倍4倍ににぎわっている。
一つ一つを捜索しているのだが、海賊旗を降ろし変装されては見つけようが無い。
海軍少佐はナミをゾロの鉄格子の前に連れて行き、
刃物で脅しながらゾロに聞く。
「言っちゃダメよ!ゾロ!!、、、、、っ!!」
ナミが叫んだ途端、少佐はナミの指にナイフで薄く傷をつける。
「やめろ!!!その女を放せっ」
ゾロはいまだ、手かせと足かせをつけたままで動けない。
「大丈夫だ、ロロノア。今のは切り傷だ。残らない。でもお前がちゃんと
言うことを聞いてくれないと、この女の指は一本ずつ消える。
手が終われば足の指、ソレが終われば、、、下から順に切り離して、、、」
「言う!言うから、ナミに手を出すな!!」
船にはルフィとサンジ、それにロビンだっている。
ウソップだって戦えるし、チョッパーだってああ見えて強い。
大丈夫。海軍ごときにやられるヤツラじゃない。
「船は、、、」
「船は?」
「ココの入り口を出て、白い花が3つ咲いている木のほうに曲がって
ずっと歩いて、酒屋が見えたとこらへんに野良犬がいるから、
そのイヌのところを曲がって、、、」
「ちょっと待て!!」
少佐はじっとゾロを見ている。
ゾロも負けじと少佐を睨む。
「ロロノア、、、さまかとは思うが真剣にしゃべているのか?」
「当たり前だ!!思い出しながらしゃべっているのに声かけんなっ!!」
「ぷっ!」
ナミがたまらず吹き出した。ゾロが真剣に道を説明したところで
行き着くのは森の中というパターンだ。
周りの海兵たちも吹きだしている。
小声で”カワイイ”とか”迷子の噂は本当だったんだ”とか、嬉しそうに
話しているのが聞こえる。
「迷子って言うなっ!!方向音痴じゃねぇ!!うるせぇ!!」
頬を染めて必死で怒っているゾロに少佐は満足げに微笑んだ。
「ロロノアも麦わらも二人も逃がしたとなると私も立場的にまずいんでな。
せめて麦わらだけでも捕まえて本部に送らないとなぁ」
暢気にそういう少佐は部下に薬のようなものを持ってこさせた。
ソレをもって鉄格子の中に入っていった。
ナミはしばられ、3人の男に押さえられナイフを向けられたままだ。
「コレを飲め。自白剤だ」
「なっ!?ちゃんと説明しているじゃねぇか!船の場所!!」
ゾロは鎖のついた手かせをジャラジャラいわせて少佐に歯向かうが
視界に小指を折られそうになっているナミが入り、力を抜いた。
「飲ませてやるから口を開けろ」
少佐は言いなりになるゾロを面白そうに眺めて自白剤をすべて飲ませた。
「ゾロになに飲ませんのよ!コイツは薬に免疫無いのよ!?やめなさいっ」
なんの抵抗もせずにあっさりと薬を飲んだゾロ。ナミを見た瞬間に大人しくなる。
ゾロが何をされても自分を守ろうとしているのだと思うとナミは苦しかった。
もともと、自分があんな大会に無理矢理ゾロを出さなければこんなことには
ならなかったのだ。出たがったルフィを危険な目にあわせないために
渋々出場したゾロ。考えてみれば、いつも最後にはみんなのワガママを聞いてくれる。
2歳しか離れていないのに、すこし甘えすぎてしまった。
ナミは心の中でクルーたちが早く助けに来てくれるのを願った。
数分で効果が出るのか、ゾロは少しうつろな目になってきている。
ポヤンとした顔でその場に座り、立っている少佐を見上げた。
「ロロノア、聞こえるか」
コクンとうなずくゾロの顔は子供のようだ。
自白剤は覚せい剤と違って幻覚をみたり、異常にハイテンションになったりしない。
ただ、言われたまま、本能のままに行動したりする。
ウソもつかないし、我慢もしない。
「麦わらの船にどうやって帰る?道がわかるか?」
核心をつく質問にもゾロは少し顔を伏せてからまた少佐に目を向け
先ほどと同じようにあそこを曲がって、と言い出す。
出入り口には白い花が確かに咲いているが、朝と夕方では花の咲いている数だって
ちがうし、野良犬が朝いたからといって今同じ場所にいるはずが無い。
あどけない。
一言で言うと、それに尽きる。
少佐ははじめてゾロをみたとき、噂通りの強い印象の美しい野獣だと思ったが、
こうして感情のガードを外せば、19歳の普通の男の子だ。
むしろ、剣術にすべてをかけていたせいか、すれていなくて純真でかわいらしい。
「ロロノアは大剣豪になりたいのだろう?ミホークと戦うのであれば
私のそばにいたほうがチャンスは多い。どうだ?一緒にこないか?
モチロン、海軍本部にはナイショだ。ココにいる海兵もお前を売るはずが無い」
「いかない。ルフィのそばで大剣豪になるって決めた」
ゾロは、はっきりと速答した。
脳は難しいことを考えられない状況にある。
心のままにしゃべっているはずだ。
どうしてもロロノアを手に入れたい。
少佐は見れば見るほど妖しい魅力を見せ付けるゾロにどんどん惹かれていった。
「その船長のルフィってやつが好きなのか?船から降りない理由はソレか?」
少佐の質問にゾロは少し考えてからゆっくりと話し出した。
「ルフィは好きだ。クルーの全員がそう思っている。あいつは海賊王になる。
ナミもウソップもチョッパーもそれにロビンだっていいヤツだし好きだ。
サンジは、、、好きだけど、、、苦しいから、、、わかんない」
さっきまでボンヤリ顔だったゾロが悲しそうに下を向く。
「サンジってヤツのことが一番好きなのか?どうして苦しいんだ?」
ゾロはしばらく黙っていたのだが、根気よく少佐が待っていると
小さな声で、ポツリポツリと話し出した。
「サンジは、、、ナミが大好きだ。次にロビンが好きで、、、オレのことは眼中に無い。
むしろ嫌ってる。オレはルフィに惚れていると勘違いをしていたし。
でも、ナミに惚れているサンジも辛いんだ。ナミはルフィが好きだから」
少佐はソレを聞いて思わずゾロを抱きしめた。ガチャリと、鎖がゆれる。
なんという無垢な心の持ち主なのか。そんな苦しい想いをしているゾロは
やはり麦わらの一味から切り離すべきなのだ。
「なにを言ってるの!?ゾロっ!!アタシは確かにルフィが好きよ?だけど
サンジ君は違うでしょうっ!!なにを見てそう思うのよ。わからないの!?」
黙って聞いていたナミはついに怒鳴った。
何でこんなところでゾロの本心なんか聞かなくちゃいけないのだ。
切なくて苦しくて、聞いてなんかいられない。
ゾロがサンジを好きなのは、なんとなく気付いていた。
でも、サンジという男はゾロよりよっぽど器用な男で
決して「素」をみんなの前には出さない。とくに女の前では
パーフェクトを演出しているのでなにが本心なのか計り知れない。
だが、ナミは自分に対して本気ではないと言うことだけは確信がある。
もしかしたらゾロのことを好きなのかもしれないと、何度か思ったくらいだ。
怒鳴るナミにビックリしたゾロは顔をあげ立ち上がった。
「オレだってナミがかわいい女だと思う。サンジとはお似合いだって
わかってる。でも忘れようとがんばってもダメなんだ」
子供みたいな顔でナミに向かって一生懸命しゃべる。
「ナミ、、、オレ、サンジが好きだ。すごく好きだ。だから、、、、お前を守る。
オレにとってもナミは大事だし、サンジの好きな女くらい守ってみせる」
「ゾロ、、、、アンタって男は、、、」
ナミは悔しさと切なさで涙が出てきた。
ゾロをこんなに苦しめているのだ誰なのか。自分の存在か。それともサンジなのか。
ずっと冷静で大人なゾロだと思っていた。だからみんなもわがままを言ったり
無意識に甘えたりしてしまうのだ。でも薬のせいとはいえ、
クールな仮面をはがしてみれば、あどけない男の子ではないか。
「女っ!お前は黙ってろ!!ロロノアはオレのそばに置く。やっと捕まえたのだ、
絶対に船には戻さないっ。」
ナミをあくまでも大事に思っているゾロに少佐はイライラしていた。
サンジとかいう男も殺してやりたいほどだ。
少佐がはじめてゾロを知ったのは、巷に出回っていた本がはじめだった。
海軍本部の中にもゾロの密かなファンと言うのが多く、よく話題になったりしていた。
それを盗み聞きしては、一度でいいから会ってみたいとずっと思っていたのだ。
海賊狩り時代を知っているイーストブルー地区の担当の海兵が
「見た瞬間に惚れるぜ?本当に色っぽくて可愛いんだ」と言っていたことは
本当だったのだ。
この美しいロロノアを目の前にしながら、たかが小娘を選ぶサンジという男など
この手で殺めてくれる。ましてやこんなに純粋なゾロを悲しませているとなると
八つ裂きにしても飽き足りない。
少佐はゾロを麦わらの一味から引き離すために
ありとあらゆる作戦を立て、そして実行に移した。
ゾロファンが多いこの港は海軍と民間人もそこそこうまくいっている。
民間人にも協力してもらって、海賊狩りのゾロを”海賊”から取り戻す作戦、
名づけて「ロロノア奪回作戦」は開始された。
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