「海軍の船だ!!一隻、コッチに向かってくるぞ!」

海軍本部にゾロとナミがいると信じて船を走らせていたメリー号。
見張台にいたウソップが叫んだ。

このクソ急いでいる時に、邪魔するんじゃねぇ!!
サンジは甲板に出てルフィたちと戦闘態勢に入った。

すると、大砲を撃つでもなく、真正面から近づく海軍の船。
そのの甲板が突然、煙に包まれ、
みるみるルフィたちの目の前まで煙が延びて、そこにスモーカーが現れた。

「よう、麦わら。なんか知らんが、わざわざ海軍本部に罠にはまりに行くそうだな」

「あぁ!?ケムリン!!どういうことだっ!うちのゾロとナミ、返せっ!!」

ルフィが噛み付くようにスモーカーに詰め寄った。

「ゾロ?あぁ、あの剣士か、ロロノアはいないのか?返せといわれても
 本部の方になど来てないぜ?なんだ?あの海賊狩りはまた迷子か?」

「おいっ!いまの、本当なんだろうなっ。本部にゾロたちは、いないのか?」

スモーカーの言葉にサンジは血の気が引いていく。
ロビンの言ったように、あれは罠だったのだ。ゾロとナミは、、、あの島に残されたままか!?

ルフィたちの怒りのこもった攻め立てように、
疑問を思ったスモーカーはルフィを煙に巻きながらクルーたちに聞く。

「おい、さっきから何の話をしている。オレはただ、支部から連絡が入って
 本部に麦わらの一行が行くので、捕まえて欲しいって話を聞いて、
 麦わらを捕まえる前に、一勝負して決着をつけようと思っただけだ。
 ほら、たしぎも来てる。あっちの船の甲板をみろよ。あいつも剣士と決着をつけたいと言ったからな」


クルーたちは全員、顔面蒼白だ。

「ゾ、、、ゾロたちは、あの島でとらわれたままだ、、」

「どういうことだ、麦わら?」

ルフィはことの一部始終をスモーカーに話して聞かせた。
敵とはいえ、悪いヤツではない。嫌いじゃない。

今は戦っている暇はないということを必死で説明した。
ゾロたちが見つかったら、いくらでも勝負を受けると。

「なんだと!?、、、、あの、、、卑怯な少佐のしそうなこった。
 おい、オレもいくから全力で引き返せ!あの島を仕切っている海軍少佐は
 ロロノアの異常なファンだ。殺されてはいないだろうが、、、、マズイな、、」

ソレを聞いたルフィたちはスモーカーの指示通り、
全速力で引き返した。

早く、早く!!ゾロを助けなければ。
なんてことだ。なんでゾロが。

きっとナミを命がけで守っているだろうゾロを思って
サンジは心臓がちぎれるような想いに駆られていた。

間に合ってくれ。ゾロに何かあったらオレは、、、、。

サンジはもう、はっきりと自分の中のゾロへの気持ちに気付いた。





あれから何日たったのか、、、
ナミは、毎日のこの狂った状態をずっと見せられている。
ゾロも時々うつろな状態になったりするのだが、ナミのほうも気がおかしくなってきた。

食事をする時は、ナミもゾロと一緒の牢屋の中に入れられ
一緒に食べることが出来る。
回数を追うごとに二人は無言になっていく。

「ゾロ、、、ルフィたちは、、来れない状況かもしれない。海軍本部って、
 あのスモーカーとかがいるところよ?もしかしたら、、、あいつら、、、」

ナミは話しながら目をつぶる。
ゾロをコレ以上苦しめていいのか。期待して待っていても、
ルフィ達が捕まっているかもしれないのだ。だとしたら、
この少佐のいいなりになって、少佐のものになってしまったほうが
良いのかもしれない。

そんなことを考えているナミに向かってゾロが途切れ途切れに言った。

「サンジが、、、絶対にサンジがお前を助けに来る。サンジが来たら、、、
 オレに構わず、スグに逃げろ、、、サンジが来たら、、、」

ゾロの様子がおかしい。

「ゾロ?あんた大丈夫??」

いまだ、紅く染まっている目でボンヤリとナミの方を向くゾロ。

「ミホークは、まだ、オレを覚えていると思うか?
 、、、もう、覚えているわけがないか、、はっ」

「しっかりしなさい、ゾロ!!アタシの顔を見て!ルフィが迎えに来るまで、
 がんばるのよっ!!ゾロっ!!」

肩を揺らせて気合を入れようとするが、ゾロは薄ら笑いを浮かべているだけだ。

「はっはっはっは!助けを待っていても無駄だ、小娘。海軍本部を舐めるなよ?
 もう、お前たちはオレのものだ。いや、ロロノアが従順になるのなら
 むしろ、お前は邪魔な人間。ロロノアの正気がまだあるうちだけ
 せいぜい守ってもらえ、”足手まとい”の小娘よ」

楽しそうに牢の前で笑う少佐。



ゾロがナミを守るために、自分を犠牲にした結果がこれだ。
少佐の言うとおり、足手まとい以外の何者でもない。
悔しくて、情けなくて、、強がりも限界で、、、本当に、もう、ダメなのかもしれない。


「、、、ゾロ、、、うぅっ、、、、助けてっ!!!ルフィっ!!!」

ナミは思わずここにはいないルフィに向かって泣き叫んだ。




『そこかーーーーーっ!!!ナミーーーーーーっ!!!』



突然、轟音とともに建物が揺れ、地下のコンクリートの壁がぶち壊れた。
煙の中から姿をあらわしたのは

「ルフィっ!!!サンジ君っ!!!、、、え、あっ!?」

そこにはスモーカーとルフィたちが息を切らせて立っている。

驚いたのはゾロをいたぶっていた少佐だ。

「なっ!!何ごとでしょうか、スモーカー大佐!?」

麦わらは本部へ向かったはず。今ごろとっくに捕まっているはずなのに、何故。
この地下基地は、本部の者しか知らない。
ならば、スモーカーが麦わらを案内してきたと言うことなのか!?

少佐はすっかり混乱している。何よりもスモーカーが鬼の形相で睨んでいる。
これはただ事ではない。

「なんで、麦わらんとこの剣士と航海士がココにいるのだ」

スモーカーはじりじりと少佐に圧力をかけながら近づいていく。

「いや、、、さっき、偶然捕まえまして、、、うぎゃぁっ!!!」

スモーカーは他の海兵たちにすべての事情を聞いたあとだ。
大佐にウソの報告をしたものは許されない。


「ルフィっ!!なんで早く来てくれないのよっ!なんでもっと早く!!」

ナミは牢の中へ入り、ゾロの頭を抱えたまま泣きじゃくっていた。

「ゴメン。。。騙された。お前らが本部へ連れて行かれたと思った。
 でも!二人とも無事でよかった!!」

あっけらかんと言う船長をナミは思い切りひっぱたいた。

「無事なんかじゃない。ゾロは無事なんかじゃ、、」


「ナミさん、ゾロは、、どうしたんだい?」

サンジがきつく眉を寄せて、静かに近づいて聞いた。ナミに守られるようにして
うつろな目をしているゾロ。クルーが助けに来ているのに気付いていないようだ。

後ろからチョッパーがテクテクとゾロの前に行って、顔を見る。

「薬を、、、使われていたんだね、、」

ゾロはぼんやりとチョッパーを見るが、反応しない。

何の薬を飲ませたのか、スモーカーが少佐に問い詰めれば
すべてを白状した。

「10日間!?毎日飲ませたのか!?廃人になっちまうだろうが!!!」

スモーカーは少佐を締め上げ怒鳴った。
ルフィたちもゾロの姿を見て、悔しさで怒りが湧き上がる。

ナミがゾロに優しくささやいた。

「サンジ君が迎えに来てくれたわよ、ゾロ、ゾロっ!サンジ君が」

と、突然、ゾロは目を見開き、ナミを掴んで牢の外へ押しやる。

「早く逃げろ!!ナミ!!サンジと早く!!」

狂ったようにナミを牢の外へやろうとする。
ソレを見ていたサンジが

「ゾロ!!もう、、終わったんだ。目を覚ませっ」

ゾロからナミを受け取ってルフィに渡し、
サンジはゾロの肩に手をかけた。

「やめろーーーーっ!!ナミに触るんじゃねぇ!!オレを犯せ!
 ナミに触るな!!オレが欲しいんだろっ!!ナミを離せっ!!」

ゾロは目の前にいるサンジに気にも留めず、
ルフィの手に渡ったナミだけを見て、狂ったように叫んだ。

「ゾロっ!!違う!!ルフィよっ、助けに来たのよ!!
 目の前にサンジ君がいるでしょ!?ゾロ!!」

ナミはルフィとゾロのいる鉄格子に近づいて必死で説明した。


ゾロは聞こえているのかいないのか、ナミから目を離さない。


そのとき、いきなりスモーカーがゾロに鉄拳を食らわせ、気を失わせた。

「何すんだ!てめぇ!!」

目の前でゾロが気絶してしまい、抱きとめながらサンジはスモーカーを睨んだ。

スモーカーはルフィに顔を向け頭を下げる。

「すまねぇ、麦わら。海軍の大失態だ。こんな変態ヤロウのせいで
 お前のトコの剣士が、、、あの薬は通常の人間なら10日も使えばすでに
 廃人のはず。だが、まだ、コイツは助かる。至急解毒剤を用意するから
 とりあえず、海へ戻れ。本部へはガサネタだったと報告する。勝負はこの次だ」

「あぁ、わかった。ゾロはこんなことぐらいでどうにかなるような弱い男じゃねぇ」

ルフィはじっとスモーカーを見つめてからきびすを返し

「ゾロをつれて船に戻るぞっ!チョッパー、ケムリンから解毒剤、もらっとけ!」

そう言って、サンジからゾロを奪い取るようにして肩に背負うと
スタスタと歩き出した。


ゾロをオレからぶんどって行きやがった。。。クソゴム。

呆然とソレを見ていたサンジは、舌打ちをするが、
隣で、声を上げて泣いているナミの肩を抱き、
ルフィの後に続いた。

「ナミさん、ケガはないのかい?」

黙って船に向かって歩いていたサンジがナミに問う。

「アタシのためにゾロが全部一人で戦ってくれた。
 でも、、、あまりにもその代償が大きすぎた。アタシの指一本のために
 ゾロは、、、ゾロは少佐たちに、、、ううっ」

サンジはナミになんの声もかけてやれなかった。

自分たちが来るまでの10日間、さっきの少佐の話とゾロの様子で
なんとなく予想できる。あの少佐のことはスモーカーが生き地獄を見せると
言っていた。だが、そんなことで補えるはずも無い傷を負ってしまったゾロとナミ。

守られていたナミだって、こんな辛かったことは無いだろう。
ゾロが毎日犯されているのを脅されながら見続けたのだ。
精神的なダメージは計り知れない。

そしてゾロは、、、ほとんど狂っていた。サンジの顔どころか
あのルフィにさえ反応していなかった。
多分、”ナミだけは守らなくては”という意識だけで生きていたのだろう。

前を歩くルフィの背中で、死んだように揺れるゾロ。

痩せたな、、、、

そう思った瞬間に、涙が溢れてきた。
隣で泣いているナミの頭を優しく撫でながら、サンジは静かにゾロを思って泣いた。




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