【北へ】
突然消えてしまったサンジを探し続けて。
もう、何日過ぎたのかもわからない。心当たりは全て当たった。
多そうに見えたサンジの取り巻き達は、実は携帯の番号しか知らないような
浅い付き合いの者ばかりだった。そして聞けば必ず皆、口をそろえて言う。
「サンジは何考えてるのかわからない。出身地も知らなければ住所すら知らない」
真面目に会話した事などない、と誰もが言うのだ。良くデートしていた女たちも
よくツルんでクラブで遊んでいたヤツラも、サンジ本人の事を何も知らなかった。
趣味は何か、夢は何か。誰も知らない。
サンジの行きそうな場所を片っ端から聞いてみても、皆、バラバラに答える。
クラブの名を挙げる者。女たちの名前を言う者。
誰一人、レストランの名や、都道府県や地域を言う者がいない。
サンジの料理の腕前を知るものも当然おらず、夢が世界一美味いレストランを作ることだと
知っているのも、どうやら、、、、、オレだけのようだ。
ゾロは今更、自分が本当にサンジの「特別」だったことを身にしみて理解した。
そしてサンジが消えてしまって初めて、サンジへの想いを自覚した。
繁華街を歩き回り疲れたてたゾロは、重たい体を引きずってアパートに戻った。
暗くて寒い部屋を見て、溜息を一つつき、そして携帯電話のボタンを押す。
出ないとわかっていても、毎日の日課となってしまったサンジへの電話。
虚しく続くベルの音にまた溜息をこぼし、電話を切る。
ストーブも電気もつけないまま、ゾロは服を着たまま、敷きっぱなしの布団にもぐりこんだ。
目をつぶれば、サンジがいたときの風景が勝手に再生される。
飯を作るサンジ。風呂で歌うサンジ。タバコを吸うサンジ。そして、、、、泣いたサンジ。
何故、あの時、サンジの気持ちを理解できなかったのか。
自分の浅はかさに、ほとほと嫌気がさす。こんなにも後悔している自分を予想できなかった
未熟さが腹立たしく、そして、とても悲しい。
サンジを傷つけた、という次元ではなかった。
あのサンジが涙を見せたのだ。それなのにオレは。
ビックリしすぎて、動揺して、拒絶してしまった。
”好きだ、ゾロ。もう隠し通せない”
震える声で、必死に告白してくれたのに。限界なのだ、と正直に言ってくれたのに。
抱きしめられ、嫌じゃなかったハズだ。あの時点でも、オレは嫌じゃなかったのに。
パニックになって、突き飛ばした。
それでも諦めずに襲い掛かってきてキスしようとしたサンジを罵った。
”やめろ!オレは男だっ、頭おかしくなったのか!?やめろ!サンジ、離せ!”
動きを止め、手を離したサンジの表情。
思い出しただけで、心臓がちぎれそうになる。
思いのほか穏やかな青い瞳から静かに流れた涙の雫。
拒絶される事を予想していたのか、落ち着いた表情で悲しく微笑んでいた。
辛い苦しみから解放されたような、そんな安堵感すら滲んでいた。
静かに部屋を出て行くサンジに何か言わなければ、と気持ちは焦り、
だが、どう言葉にすればよいのかも見当がつかず、
オレはサンジを追うことすら出来ずにうなだれてしまった。
馬鹿なオレは、次の日にちゃんと話し合おうと、軽く考えていたのだ。
アノ涙の意味も理解せず、またサンジに毎日会えるものだと勝手に思っていた。
サンジの気持ちを今になって、本気の告白だったと気付いても、返事をしたくても、もう遅い。
あのとき、拒絶したのだ。頭がおかしいと、でたらめに口走った言葉は
オレの生活をこんなにも変えてしまった。自分の放った一言のせいで。
冷え切っている布団はいつまでも暖かくなってはくれず、ゾロは手足を丸めて縮こまった。
”ストーブくらいつけろよ、マリモン”
よく言うサンジのセリフを思い出して、ゾロはふっと小さく笑う。
思い出し笑いは、やがて歪み、そして今日もゾロは布団の中で、後悔する。
こうして一生、あの時の自分を後悔して生きていくのだろうか。
そう思うと体が震える。
「いや、諦めねぇ。オレはアイツよりも諦めが悪いんだ。絶対に探す。必ず探し出す」
狂いそうな自分の精神を、諦めないことで何とか保ち、ゾロはサンジ探しを止めなかった。
オレをきっぱり諦めたとしても、夢は絶対に諦めてはいないはずだ。
ゾロはサンジの実家の住所がわからないまま、北を目指して飛行機に乗った。
”オレは北国育ちだから寒いのはわりと平気だ”と言っていた事を思い出したのだ。
街中のレストランはもう探した。この東京から離れ、サンジはどこかでコックの修行をしていると
ゾロは推測していた。ならば、実家のレストランに戻って修行している線が濃い。
飛行機の中でゾロは日本地図を広げた。
「北国って、、、、どこまでが北国って呼ぶんだ?」
北海道はモチロン北国だ。しかし東北だって北国だろう?青森とか。
しばらく地図を睨んでいたが、ゾロは口を尖らせて地図を畳んでしまった。
とにかく、北へ行けばいいのだ。何日かかろうが、いくら金を使おうが構わない。
少しでもサンジがいる可能性があるならば、どこへだって行ってやる。
ゾロは鼻息荒く決意を新たに拳を握った。
「ププッ」
モチベーションが高まっているゾロの隣で、男がふきだしたいのを堪えて笑っていた。
そういえば、ココは飛行機の中だったと、今気付いた顔でゾロが隣の男を見た。
いかにも旅人です、という感じの赤い髪の男は物騒な傷が顔にある割には
優しそうな表情でゾロに挨拶した。
「どーも。笑って悪かったな。でも、君、、、挙動不審っ。はははっ」
不安そうな顔で窓を見ていると思ったら突然、大きな日本地図を広げ
う~ん、う~んと唸り、そして急に地図を畳んだかと思えば鼻息を荒げて握りこぶしを作る。
「頭の中で、ストーリーが展開されていたようだけど、オッサン、ちょっとビックリしたぜ」
楽しそうに笑った男を見て、ゾロはカァッと顔が赤くなった。
頭の中はサンジ一色で、周りすら見えていなかった。ここ一ヶ月あまり、ずっとそうだ。
サンジが消えてから、やけに独りごとが増えたし、行動も奇怪だ。
今までサンジとしか会話していなかったのだな、と改めて思う。
あまりにも異常者のような行動をとっていたことを思い出し、
ゾロは隣の男にスミマセンと一応わびを入れた。
「いや、面白かったから迷惑じゃないよ。オレはシャンクス。仕事は探偵。君は?」
なんで飛行機で隣り合わせになったというだけで名を名乗らなければいけないのだと
ゾロは不思議に思ったが、相手が名乗ったのだ。こちらも名乗るのが礼儀。
「オレはゾロ。ロロノア・ゾロ。、、、シャンクスさん、探偵?コナンみてぇ」
ゾロが名乗った途端に、シャンクスが、にへら~と微笑み、「ヨロシクなっ」と握手してきた。
またもゾロはなんで握手?とおもいつつ、握られたら握り返すのが礼儀、と
シャンクスのペースに乗せられていった。
ベラベラと話をするシャンクスに相槌を打ちながら、ゾロは不思議な感覚になっていた。
なんか、サンジと感じが似ている。
ふと見せる優しい眼差しが、どこかサンジとかぶる。
「おい、聞いてたか?泊まる所、決まっているのか?ゾロ」
人探しに北へ向かっているとゾロは言ったきり、ボンヤリしていたので
シャンクスの話を聞いていなかった。
「え?泊まる所?、、、、いや、泊まる所というか、行き先もこれから決める」
とりあえず北海道。それだけしか決めていないので、千歳空港でおりたら、
どうしようか、と思っていたところだ。
ゾロは「んー」と眉を寄せ、再び日本地図をひろげようとしたが、シャンクスが止めた。
「ぷっ!いや、まず、札幌に行こうよ、ゾロ君。探している男は何をしている人?」
なぜ探している人間が”男”だとわかったのかは不思議だったが
ゾロはシャンクスの質問に素直に答えた。
学生だったが、今はたぶん、コックの修行をしていると思う、と。
「実家が北のほう、ということしか知らないので北海道からしらみつぶしにレストランを当たる」
ぶっきらぼうに言い捨てたゾロの瞳には強い意思を感じる。
シャンクスはニンマリと微笑んで、頷いた。
「洋食コックの修行ってのは、有名レストランや有名ホテルの厨房に行きたがる。
有名所は札幌に集まっているから、やっぱ、札幌から探すのがいいんじゃないか?」
オッサンはこれでも探偵だよ?オレなら札幌から探すね。
シャンクスの的確なアドバイスに、ゾロがパァッと明るい顔で「そうする!」と笑った。
どうやらゾロは宗谷岬の北から函館の果てまで、回る気だったらしい。
考え足らずなところが可愛らしいが、その瞳は獣のように強い。
シャンクスはウキウキと表情を変えたゾロを観賞しながら「なるほどね」と思った。
これは、あのサンジがマジで惚れるだけはある。
突然、大学を辞めて札幌に戻ってきたサンジは、実家のレストラン「バラティエ」に
見習として働き出した。あれほど嫌っていた実家に戻るなんて、よほどの理由があるのだろうと
伯父であるシャンクスは探りを入れたのだが、サンジは何を聞いても
「別に。バラティエを越えるレストラン開業に向けて本格的に修行する」と答えるだけだった。
しかし、こっそりサンジの部屋に入ったとき、机の上に無造作に置いてあった携帯と写真。
それを見て、なんとなくわかった。通話していない着信既歴。同じ番号から、毎日。
そしてミドリの髪の男と二人の笑顔の写真。
サンジは感情がスッポリと抜け落ちたような顔つきで毎日、仕事していた。
可愛がっていた甥っ子だけに、シャンクスは違法と知りつつも、大手通信会社の技術者のコネを利用し
着信番号の契約者であるゾロの住所を掴んだのだ。
シャンクスの兄であるゼフはサンジの事は放っておけ、と言ったが、
シャンクスはどうしても、サンジを見てはいられずに東京へ飛んだのだ。
ゾロの居場所はすぐに突き止め、観察した。ゾロは自分も大学を休んで、サンジを探し回っていた。
慎重に後をつけていたが、ゾロはシャンクスに気付きもせずに、血眼でサンジを毎日探していた。
そしてとうとう飛行機のチケットを買ったときは、慌てて、チケットカウンターに走って
「さっきチケットを買ったゾロの連れだけど、もう一枚追加できる?」と慌ててチケット買ったのだ。
南から探されては時間がかかりすぎると思ったが、手渡されたチケットは羽田発札幌行き。
サンジは驚くだろう。ゾロにふられたのか、男同士の恋愛に苦しんだのか、札幌に戻った真意は
わからないが、ゾロはこんなにも必死で探しているのだ。
写真も携帯も捨てられないでいるサンジには、きっとプラスになるに違いない。
シャンクスは、いつ、自分の正体を明かそうかと、ゾロの笑顔を見ながら考えていた。
「寒っ!!うぁっ、8度だって!?信じられねぇっ」
千歳空港に下りたゾロは、空港ロビーを出た途端、パーカーのフードをかぶった。
Tシャツにパーカーだけでは確かに寒い。両手を擦り合わせながら、JRの時刻表を見たり
バス停を探してウロウロしているゾロに、後ろからシャンクスが声をかけた。
「ゾロ、オレも札幌だから、車に乗れよ。駐車場に車、入れっぱなしなんだよ。おいで」
おいで、と呼ばれても、そこまで他人の世話になるわけにはいかない。
ゾロは首を横に振り、丁重に断ったのだが、シャンクスの次の言葉に、心が動いた。
「札幌でスッゲー有名な洋食レストランに用事があるんだよ。お前、そこ、見たくない?」
まだ、イエローマップも買っていない。タウンページも見ていない。
札幌人のシャンクスが有名というのだから、本当なのだろう。
一流であればあるほど、サンジに近づける。
ゾロはアリガトウございマス、とぎこちなく礼を言って、シャンクスの車に乗った。
「なんか、本当に、、、すみません。会ったばかりで世話になってしまって。
レストランに用事って、、、探偵の仕事ですか?」
ゾロが上目使いで運転席を見ると、シャンクスは不安そうな顔のゾロの頭をぽんと叩き、笑った。
「飯を食う用事!札幌に来たら、まずはあの店にいかないとな。マジで美味いから期待しとけ」
言われてみれば、ハラペコだ。最近、カップラーメンすら食べていなかった。
サンジを探しながらコンビニで買ったオニギリを歩きながら食べる生活が続いていた。
知り合ったばかりのシャンクスが、なぜ、そんなに親切にしてくれるのか不思議だったが、
北海道の人はあたたかい、と、いつか見たテレビを思い出して、ゾロは素直にシャンクスに感謝した。
久しぶりに希望の光りが見えてきたゾロは、そのままシャンクスの車でしばし眠った。
体を激しく揺さぶられて目を開けてみれば、髪の赤い男の顔のアップでゾロは驚いた。
そういえばシャンクスに乗せてもらったことをゾロは思い出す。日が暮れてもう夜だ。
「着いたよ、ゾロ。ココが札幌だ」
路上に違法駐車しているシャンクスの車の横には街路樹が綺麗な電光を放っている。
顔をあげてみれば、高層ビルが立ち並ぶ街中なのに沢山の木々が茂り、それらに電飾を施してある。
街全体がイルミネーションのような美しい風景。
「札幌、、、ここが、、、」
ぼんやりと、その瞳に光りを反射させているゾロが寝ぼけていて可愛らしい。
ボケッとしているゾロの手を引き、シャンクスはレンガ作りの建物に入っていった。
高級感のあるレストランのドアを開けるとポーターがシャンクスに頭を下げる。
「おかえりなさいませ。オーナーが厨房でお待ちです。先ずは顔を出されて、、」
「何言ってんのぉ~。こっちはハラペコなの。VIP空いてるんだろ?二人前、急いで頼むわ」
黒服の従業員にニカッとズルイ笑いを残し、シャンクスはゾロの手を引いてそのまま
VIP専用の個室へ向かった。ホールの客は皆、ジャケット、ネクタイを着用している。
ホールを通らずに、従業員通路から、VIPルームに入り、ゾロを座らせた。
「す、、、すげっ、、、すげぇレストラン!ここ、個室?」
ゾロは慌てて自分の財布をだして、中身を見る。カードまで出してシャンクスを見た。
「ははっ!心配いらねぇ。ここは奢りだ。楽しかった旅路のお礼。まずは食おうぜ?絶品料理」
次々に運ばれてくる料理にゾロは驚き、そして、嬉しそうに食べ始めた。
「うめぇだろ?」
もくもくと食べていたゾロがふと、顔をあげたので、シャンクスが話し掛けた。
だが、ゾロは返事をせずに、また、食べていた料理を見る。
「オレ、、、、この味、知ってる。オレの探していたヤツと同じ味」
口にソースをつけたまま、固まっているゾロ。
シャンクスは控えていたボーイをよび、耳打ちした。ボーイは頷き去っていく。
「今、それ作ったコックを呼んだから。美味かったのなら褒めてやれよ、ゾロ」
とても穏やかに、優しく微笑んだシャンクスに、ゾロはコクリと頷いた。
VIPの客が誰なのかも聞かされないまま呼び出されたサンジは、鬼の形相で現れた。
ドアを開けながら、イライラした口調でしゃべりながら入ってきた。
「クソ忙しい時にお呼び出し、ありがとうございます。当店の味がお気に召しましたか、、、っ!?
、、、、え、、、ゾロ!?、、、シャンクス、なんで?、、、、ゾ、ゾロ?」
コック姿で登場したサンジ。
ゾロが見たこともない、大人みたいなサンジ。
「サンジっ、、、、、、オレ、探したっ!お前をずっと探したっ!!」
ガタン、とイスを後ろに倒し、ゾロが体を震わせて立ち上がった。
サンジの顔を睨むように見つめるその瞳はみるみる潤み始めた。
「ゾロ、、、」
呆然と立ち尽くしているサンジに、ゾロが駆け寄り、ぶつかるように抱きついた。
「消えやがるからっ、、お前、消えちまうからっ、、、オレ、後悔して、後悔してっ、、っ」
ボロボロと涙をこぼしながら、しゃくりあげて声を出すゾロを
サンジは信じられないという顔でゾロを見ていた。
まるで子供のように泣いている。すがるようにしがみついているゾロ。
「ゾロ、オレのこと探してくれたのか?」
恐る恐る、サンジがゾロの瞳を覗きこんだ。もう、傷つくのはゴメンなのだ。
ぬか喜びして、苦しむのは耐えられない。
しかし、サンジの不安をよそに、ゾロは必死で頷いた。
「探したっ!東京中のクラブも回った!目立つ女たちにも聞いた!レストランだって全部見た!」
どこにもいなくて途方にくれてっ。お前がいつか言った「北国育ち」って言葉を頼りに
飛行機に乗ったんだ。お前が消えてから大学も一度も行ってない!探し続けてた!!
ゾロはもう、涙声で、何を言っているのか聞き取りづらい。
だが、サンジは最後の一言を聞き逃さなかった。
「オレもっ、、オレもお前が好きだって、言う為に、オレはっ、、ぅ」
ゾロの言葉にサンジは天を仰いだ。
突き上げてくるものを堪えきれずに、サンジは目をつぶる。
ゾロの背中に手を回し、力いっぱい抱きしめた。
どこかに神様がいるのなら、本気でアリガトウと叫びたい。
忘れようにも忘れられるはずのない愛しいゾロが、オレの気持ちに答え、
そしてこの北の大地にまで来てくれた。好きだと言うために、オレを探してくれた。
サンジは自分の濡れた瞳にも気付かず、ゾロの涙を拭う。
そして、これ以上無い、柔らかい表情で笑った。
「オレは今でも、ずっとこれからもゾロが好きだよ」
そのサンジの笑顔で、ゾロはやっとサンジに会えた事を実感した。
ひっく、ひっくと、咽を鳴らしながら、ゾロはサンジの肩に顔をうずめる。
「も、絶対に消えないでくれ。オレの前から消えるな。何をしてもいいから。
好きにしていいから、どこへも行くな。消えるな。いなくなるなっ!!」
わめき散らすゾロの背中を、サンジはゆっくりと撫で、「あぁ、約束する」と呟いた。
「で?なんでシャンクスと一緒なんだよ」
ゾロがようやく泣き止んだ頃、シャンクスは思い切りサンジに睨まれて、頭を掻いている。
「いや、ほら、可愛い甥っ子のために、愛のキューピットを、、、」
「テメェ!オレの携帯、勝手に見やがったな!?また違法なことしてゾロの住所突き止めやがって!」
いつか逮捕されるぞ!あの通信技術者のベンさんだって、捕まるぞ!機密事項漏洩違反で!
ガミガミと、伯父であるシャンクスを叱るサンジだが、最後に、スッと頭を下げた。
「でもシャンクス、、いや、伯父さん、ありがとう。ゾロをつれてきてくれて、ありがとう」
ずっと無言でサンジの胸に収まっていたゾロが、バッと振り返ってシャンクスを見た。
シャンクスは口笛を吹いてあさっての方向を見ている。
「伯父さん?、、、サンジの伯父さん??、、、住所つきとめるって、、、えぇっ!?」
探偵とは聞いていたが、そのターゲットが自分だったなんて、ゾロは驚愕した。
偶然、隣り合わせて座っただけのいい人だと思っていたのに、
実は東京で張り込まれていたというのか。さりげなく誘ったこのレストランはサンジの実家だった。
「いいじゃん。ちょっと遊んだだけだろう?サンジにも会えたし、めでたいな、ゾロ!」
ヘラヘラ笑うシャンクスに、ゾロは深々と頭を下げた。
一人で探したら何年もかかるかもしれなかったのだ。それを、案内してもらえた。
そして目の前にはサンジがちゃんといた。感謝してもしきれない。
三人が照れ隠しに笑いあったとき、サンジが急に大声を出した。
「めでたいといえば!!今日は何日だ!?ゾロの誕生日じゃねぇか!!
うわっ、こうしちゃいられねぇ。チョット待ってろよ、ゾロ!逃げるなよ!ケーキ作ってくる!!」
ドタバタと、サンジが走ってVIPルームを出て行った。
名残惜しそうにドアを見つめているゾロを、シャンクスがイスに座らせ、
そしてミドリ頭を優しく撫でた。
「誕生日おめでとう、ゾロ。さて、探し物が見つかったけど、お前、どうするんだ?これから」
シャンクスの落ち着いた声に、ゾロは顔を上げ、また強い瞳でしっかりと言った。
「オレ、大学辞めてこっちに住む。サンジを見つけたら連れ戻そうと思っていたけど、、、」
コック姿のサンジを見て決心した。あいつはココで修行するのが一番だ。
ならばオレがこっちに来たらいいんだ。サンジがいるなら寒くても平気だ。仕事探して、札幌に住む。
キラキラした瞳でそう言われ、シャンクスはゆっくりと頷いた。
「よし!ゾロはオレの事務所で働け。世間知らずなお前を一から教育してやるぜ」
ははは!と豪快に笑ったシャンクスにゾロもまた、頭を下げた。
札幌、いいかもしれない。緑も多いし、イルミネーションも綺麗だし、早速仕事も決まったし。
なによりもサンジがいる。それだけで物凄くいい街に感じる。
しばらくして、二段になっているケーキをサンジが運んできた。
19本のろうそくの炎がつけられ、中央のチョコレートの文字が浮かび上がった。
覗きこんだシャンクスがソレを読み上げた。
「ハッピーバースディ、、あんど、、、アイ、ラブ、ゾロ、、、うわっ!恥かしいー、サンジー!」
しかし、当の本人たちはケーキに書かれたチョコの文字よりも恥かしい事をしていて。
シャンクスは、ニヤけつつも、静かにVIPルームを出て行った。
「誕生日に会いに来てくれるなんて、すげぇドラマティックな男だな、ゾロって」
「いや、、、誕生日は忘れてたけど、、、、でもオレには最高の一日だ」
ろうそくが短くなるまで、二人はキスを繰り返し、もう少しで消えそうな炎を二人で吹き消した。
ずっと一緒にいられることをゾロは祈った。
そしてその祈りはゾロ自身によって叶えられる。
いざ、札幌へ。
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ゾロ、おめでとう!二人とも札幌に来ればいい。雪がふったら来いよー!
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